Golden_Falcon’s Magia

現代魔術の実践の試み

蜘蛛の糸

自分を守っていた様々なものが虚無に消えかけるのを感じていた
蜘蛛のフェルトで作られたローブもほどけていく
壺の入口はもう見えなくなっていて
灰色の世界は遠近感も加速度もあらゆる間隔を奪う空間だった
自分の全てのリソースが無に消えていく
やがて自分自身が存在と非存在の狭間に落ちていくのだろう
生きているけれど死んでいる
もう目を開けていることにも意味は無くなっていく
・・・
名前を呼ばれた気がしたが、幻か?
柔らかい物に強く締められる感じがした
懐かしいな
目を開けた
大蜘蛛だった
メイガスさん?
やがて墜落にブレーキがかかるような感触があった

良かった、ほつれる糸を頼りに追いかけて来ましたが追いつくことが出来ました、私も命懸けでしたよ
メイガスさん・・・
あなたが飛び込んだとき、キムくんがローブの裾を掴んだのです
糸がほつれたお陰であなたを追いかけることが出来ました
私は壺に飛び込んで、咄嗟に蜘蛛に戻って糸を吐き出し、ほつれる糸を補強しながらあなたを追いかけました、ここまで大変でしたよ
メイガスさん・・・
蜘蛛は私に乳房を差し出した
私はしゃぶりつきたかったけれど、情けない自分にその資格はないと思った
蜘蛛は乳房を私の口に押しつけてきた
私はそれから必死に逃れようとした
もみ合ってしまった

お願いです、あなたが助かろうとする意思を示して下さい
蜘蛛が言った
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
私は泣いて謝った
蜘蛛がまた乳房を差し出したので、今度はそれを思いっきり頬張った
私が乳を飲むのを確認した蜘蛛は来し方に延びた蜘蛛の糸を引き返し始めた
二本の腕は苦しいほどきつく私を抱き締めていて
残りの六本と触肢でスルスルと糸を上り始めた
かなりの距離、ほつれた糸を補強しながら全速力で下りてきたようだった
私は大蜘蛛の強さに畏れをなした